11月26日(月)放送
芥川賞作家 藤原智美さん
「暴走老人!」増加中
ある税務署に訪れた上品な身なりのお年寄りが、突然事務員の胸ぐらをつかんで大きな声を出す。藤原さんは3年ほど前こんな出来事に遭遇したことから、社会の根底にある問題を意識するようになり、『暴走老人!』を執筆した。
今年8月に出版されてから、「見たことある」「先日、被害にあった」など共感の声が多く寄せられているそうだ。いい年をした大人がキレる、駄々をこねるという現象は生活実感として増えている。
なぜ、お年寄りがキレやすくなったのか?
今や「裏ワザ」と「ショートカット」の時代である。待つ時間を短縮し、いかに早く目的を達成するかが問われている。時間は自分でコントロールできるという意識が定着し、じゃまされたことに強いストレスを感じるようになった。藤原さん自身、20年前の自分と比較して「せっかち」になっていることを感じている。以前は出版社へ出向いて原稿を届けていた。インターネットの普及でメールのやり取りが中心になると、パソコンの故障や通信障害でイライラを強く感じてしまう。待つことに耐えられない社会になってしまった。
人との関わり方も大きく変化した。システム化、マニュアル化が進み社会の一員として新しいことを覚えていかねばならない。エスカレーターは右側に立つなど暗黙のルールが日常に存在する。
また、お年寄りが「ご隠居」と呼ばれ、ありがたい存在だった時代は過ぎ去った。いつまでも若々しく生きがいを持つことが美徳とされ、年老いてから自分探しのため奮闘するのだ。
藤原さんは日常生活の変化やストレスに加え、大人の「言葉の力」が弱っていることも問題なのではと指摘する。自分の感情を理解し、相手に伝えるものが言葉だ。この力が不足すれば、赤ちゃんのように感情を爆発させるしかない。
いま私たちに求められているのは、「どうすれば被害者にならないか?」を考えるのではなく、まず「自分もキレるかもしれない」と自覚すること。そして衝突した時に問題を解決できる“生”のコミュニケーション能力を高めることも必要だろう。
他人事ではない、社会の問題を分析した藤原さんの著書も是非お読みください!
『暴走老人!』文藝春秋
税込み1050円です。