★なぜ最近「イスラム金融」が話題になっているのか?
(1)原油価格の値上がりから、中東の産油国が保有する「オイル・マネー」(イスラム教の基準に従って投資される)が急増し、その影響力が拡大している。
(2)世界中で自己増殖する投機的なマネーの弊害が問題になる中で、お金に正常な金融の機能を取り戻させる運動が起きており、地域通貨やエコマネーと並んで「利子を取らない」というイスラム金融の考え方が「マネーの正常化」に繋がるものとして注目されている。
★「利子をとらない」と言うが、それで経済活動が成り立つのか。
コーランには神が利子を禁じているという記述があるが、コーランの趣旨は不労所得の禁止にあると解されている。お金を借りて商売をして利益を上げる事自体はむしろ奨励されていて、利子という形ではなく利益の配分として商売の成果が貸し手に還元される。株式発行やリースの仕組みに似ている面もあるが、イスラム金融の特徴は資金が実際の経済活動に紐付きで使われ、投機的に自己増殖しない点。
★具体的にどういう実例があるのか。
(1)東南アジアのイスラム圏での代表的な稲作金融。農家は銀行から種籾を借りて稲を栽培し、収穫する。収穫の中から借りた種籾を、利子相当分を上乗せして銀行に返す。ここではお金が登場しないからマネーが投機的に自己増殖する余地がなく、それでいて銀行の金融機能が完全に果たされている。本来の金融の原点とも言える。
(2)開発途上国の貧困層の経済的自立を支援する金融の仕組み。
・2006年、イスラム国であるバングラデシュのグラミン銀行とその創設者であるムハマド・ユヌス氏がノーベル平和賞を受賞した。
・バングラデシュでは多くの国民、特に女性が竹細工などの手工芸品の単純な低賃金加工に従事し、働けど働けど貧困から抜け出せずにいた。
・グラミン銀行はこうしたワーキング・プア層に無担保・低金利で自立資金を貸し出し、また借り手同士が互いに助け合う仕組みを作った。これにより、多くの借り手は自分で手工芸品の材料を仕入れ、加工技術を習得し、製品を販売することが可能になり、貧困から抜け出して経済的自立を果たした。
どちらの仕組みも貸し手が単にお金を貸すだけではなく、商売がうまく行って利益が出るように指導・支援する点でコーランの教えに沿ったもの。
★問題点は?
商売がうまく行かなければ借金を返さなくてもよい為、安易に貸出しが行なわれると借り手が甘えて経営努力を怠るようになってしまう危険。(イスラム金融に限ったことではないが)
★イスラム金融は今後ますます普及して行くのか?
・社会格差の是正やマネーの正常化は「イスラム金融」という枠の中だけでは解決に限界があるが、「貸しっ放しにしないで借り手をしっかりサポートする」という考え方自体は、日本でも地域金融・中小企業金融の考え方と共通する。
・一方オイル・マネーの増殖が続くため、イスラム国の投資基準や考え方をよく研究し、正しく理解する事が、国際ビジネスを展開する上で今後ますます重要になる。