7月16日 「遺体から学ぶ 防災とは」
6000人を超える命を奪った阪神淡路大震災で、3000体を超える遺体を診て、死因の特定に携わった監察医が御前崎市で講演しました。多くの遺体を診てきたからこそわかる、事前の対策の重要性を聞きました。
先月、御前崎市で開かれたシンポジウムです。
「遺体から見た防災対策」というテーマで登壇したのは、阪神淡路大震災で3000体もの遺体を診てきた監察医 徳島大学教授の西村明儒 教授です。
西村教授自身も阪神淡路大震災の被災者です。
「説明するに当たりまして、遺体を実際に見ていただかないとわからない部分があります。きょうはちょっとお写真をお見せします。」
西村教授は、遺体=死亡した人に注目することで、なぜ死亡してしまったのか、どう対策をすべきなのかを考えます。
阪神淡路大震災ではおよそ8割の人が建物の倒壊によって亡くなったと言われています。倒壊による死亡というと身体の上に大きなものが落ちてくるイメージですが、神戸市内の死者およそ3650人を調べた結果、体の厚みが変わるほど激しいダメージを受けて亡くなる「圧死」は12%にすぎませんでした。
最も多かったのは胸や腹部を圧迫されて呼吸ができなくなる「窒息死」です。
西村教授は「お腹はそのまま、肋骨も折れてない。内臓も潰れていない。呼吸運動ができなくなっただけなんです。だから、もうちょっと梁や柱が10cm~20cm上にあったら、この人は閉じ込められるだけで息ができて助かってる。そこが大きいんです。息ができなくなれば死んでしまう。」といいます。
身体をつぶされなくても一部に大きな力がかかり、息が出来なくなって死亡してしまうことを「外傷性窒息死」と言います。
体重の3倍以上の力で押さえつけられた場合、ほとんどの人が1時間以内に窒息死すると言われています。
西村教授は
「単純な閉じこめではなくて、物が胸やお腹に乗って死んでいく人は、1時間しか助けられる猶予がないんです。」
といいます。
東海地震でも、予想される死亡者の多くは建物の倒壊が原因になると予測されています。
西村教授はあらためて住宅の耐震化の重要性を訴えました。
「応急対応でたくさんの人が助かると思ったら大間違い。ほとんどの人は何をやったって無理。事前の対策しかない。それを知っておいて欲しい。では、もっと助かる方法はないのか。事前に家を補強しておくということ。」
実際に3000人もの遺体を目にしてきた西村教授の話と遺体の写真を前にして、会場の人たちは最後まで真剣な表情を崩しませんでした。
講演を聞いた人は、「とても衝撃的だった。本当に自分のことは自分で守らなければとつくづく感じました。」
「私の家はつぶれない、私は死なないという気持ちを持っていたけれども、今日の話を聞いたり、家の構造の話を聞きながら、直すところは直さなければいけないな、と思った。」と語ります。
御前崎災害支援ネットワークの落合さんは、「私も写真を見たときに感じるものがあった。他の人にも見てもらって、一つでも命が助かってもらえれば、という意味と、耐震の重要性を感じて欲しかった。」といいます。
講演の後で西村教授は「他の地域に比べると唯一予想可能な地震といわれている。東海地震は必ず来るといわれている。まず、次に起こる東海地震のことを考えるなら、自分の家、自分の命なんですから、何とか対策を事前にやっておく。」と、東海地震については特に事前の耐震対策が重要になると話しました。
実際に大地震が起きた時に、生と死を分けるものは何か、これを切実に感じた講演会だったのではないでしょうか。