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2006年5月2日 実生のお茶


 

5月2日(火)、八十八夜のこの日、今は非常に珍しくなった「実生の茶」を取上げて放送しました。

 

「みしょうのちゃ」と読みます。文字どおり「実から生まれたお茶」という意味です。お茶も植物なんだから、ヒマワリの種から育った葉・茎が華を咲かせるように、ドングリがやがて、樫や椎の大きな木になるように、実から(つまり種子から)お茶が育つのは当たり前だろうとお思いになるかもしれませんが、静岡県内のお茶栽培の状況は、そうではありません。実から育っていない、お茶の割合が98%以上あります。

 

実から育っていないお茶は、「挿し木」から育てた苗の状態で農家が手に入れるものです。つまり優秀とされた品種・個体のコピーです。

 

お茶の木が実をつけるには、基本的に、異なる品種の、めしべとおしべが交配することが必要です。そうして出来た実から、出てきたお茶の葉が、どちらの親の特徴を色濃く持つかは、神のみぞ知る領域ですから、品種・特徴を揃えて、お茶の木を育てるためには、「挿し木」は不可欠なのです。昭和30年に、静岡県は「やぶきた」をはじめとする奨励品種を制定し、その頃から、茶園に重機が入るようになったこともあって、「実生」(あるいは「在来」という言い方もした)の畑は、奨励品種に、一気に植え替えられていきました。

 

「挿し木」の茶畑にすれば、需要のある品種を、均一の品質で、栽培出来るから、「実生」の畑よりも優秀だということに、普通はなります。事実、ここ50年くらいの茶栽培の流れは、まさにそういう考え方だったのですが、「挿し木」の場合と「実生」を比べた時、「地下」が大きく違うというのです。「挿し木」は、一番茶をとらずに、新芽の2節2葉をカットしたところから育てた苗・木です。「地下」に伸びていく根は、本来枝になるところが、地中に潜ったもの。浅い場合には30センチ程で留まります。自分で水分・養分を摂っていく力は弱いと言えます。それに比べ、「実生」の場合は、お茶の実から直根(ちょっこん)が、ずどんと下へ2、3メートル伸びるそうです。大抵の日照りなら、自分で水分を確保できる根の深さです。「挿し木」がひ弱で、過保護に育てられがちになるのに対し、「実生」は逞しいのです。

 

「『実生』の方が樹勢がいい。木が元気なら、元気なお茶の芽が出る。元気な芽なら、いいお茶が出来る。」というのが、今回取材した「実生」の茶を作る農家の考え方でした。

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