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5月9日 団塊の世代(2) 「価値観を変えた物は…」

団塊の世代は、戦後の目覚ましい経済発展の中で育ちました。上り坂の日本には勢いがあり、その「勢い」を共有することで、当時の日本人は国民総中流意識を持つようになっていきましたが、現実には決して豊かとは言えませんでした。ただ、価値観は大きく変化していたのです。特に、1クラス50~55人という過密な学校生活を送っていた団塊の世代は、興味を抱く対象も多様化し、新しい何かを模索していました。


そんな彼らが中学高校時代、昭和39年~昭和40年にかけて衝撃的な出会いをしたのが「エレキギター」でした。


ベンチャーズ、そしてビートルズ、その後に来るグループサウンズ。その音楽に衝撃を受けた彼等は、演奏している楽器にも注目しました。特に「エレキギター」は画期的な楽器として目に映ったのです。その影響でギターを始めた人たちも大勢いました。バンドを作ろうという動きもたくさん出ました。エレキバンド勝ち抜きコンテスト番組も登場し、ブームを形成したのです。ただアーティストたちが手にしていたエレキギターは、小遣いが月500~1000円だった、当時の中高校生には高嶺の花、というより、親たちにさえ手の届かないものでした。そんな団塊の世代が子育ても一段落し、定年も具体的に見えてきたここ数年、ふと立ち止まってあの頃を思い出す人たちが増えてきているのです。


富士市の楽器店を訪ねました。

昭和40年、エレキギターのインストゥルメンタル・バンド「ベンチャーズ」が来日ステージで手にし、加山雄三が映画「エレキの若大将」で使用して一躍有名となった「モズライトギター」は当時のギターキッズの憧れの的でした。しかし、当時のモズライトの価格はおよそ30万円。大卒初任給2万円という時代ではとても買える代物ではなかったのです。

 

五十棲淑朗さんは、あの当時はエレキギターは買えなかったが、今では初任給で買えると話していました。そして、同世代の人たちに「やり残した宿題をやり直してみませんか?」と呼びかけていました。

 


昔の憧れのエレキを購入し、同世代でバンドを組んでいらっしゃる皆さんです。バンド名はクリーパーズ(Bass:境田修一白に水玉 Drms:大石秀樹赤 L.G:吉田利一 S.G:前田文里)。皆さんに、ギターを手に入れたときの気持ちなどを伺いました。

 

・吉田さん)嬉しくて抱いてに寝た。
・前田さん)一緒に寝た。
・大石さん)モズライトという楽器自体が、日本の文化であり、象徴。
・境田さん)全国どこに行っても、集まったメンバーでできるのがいい。

 

練習スタジオには、同じように最近、懐かしいギターを購入した人も遊びに来ていました。友人の高山謙一さんです。高山さんは、仲間と集まって、昔を思い出しながら、出来なかったことをやりだしている、と語ってくれました。

 

欲しかったギター。1台では物足りず、ついつい何台も買ってしまった方のお宅を訪ねました。虎屋 静男さんです。虎屋さんは、仕事も一段落し、これからの人生をどのように過ごすかを考えた時、若い頃求めていたギターをもう1回やってみようかという気持ちになったそうです。虎屋さんの奥さんの靖子さんは、年をとっても、好きなことを続けられることはいいことだと思うと語っていました。虎屋さんは、仕事に定年はあるが、音楽には定年はない。これからが青春だと、語っていました。

当時、エレキギターを持つだけで不良呼ばわりもされました。価格だけでなく、親の反対や受験戦争によって、バンドはもとより、エレキギターを持つことを諦めた人が、たくさんいました。しかし、青春時代に、心の片隅にくすぶり続けていた「エレキ」への想いは、ずっと消えることはありませんでした。きょうも楽器店の、並んでいるギターの前で、タイムスリップしている団塊の世代がいるかもしれません。

 

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