今回は「あの1億円はどうなった?」と題しまして、“ふるさと創生事業”のその後を追跡取材しました。
1987年、当時の竹下総理が掲げた持論、「ふるさと創生論」。物の豊かさばかりを求めた過去を反省し、心豊かな社会をつくることを目標に掲げられ、全国の市町村にそれぞれ1億円が交付された事業です。
1億円の使い道は各市町村に任され、金塊を買ったまち、資料館など、いわゆる箱ものを造ったまちなど、対応はそれぞれに分かれ、当時は「ばらまき」との批判もあがりました。
県内でも不交付団体を除き、58市町村に国から1億円が交付されました。果たして、各自治体はこの1億円をどのように使ったのでしょうか。
富士郡芝川町の温泉施設「ユー・トリオ」。芝川町では、1億円を使い、温泉源を掘削。見事掘り当て、町の保養施設として11年前にこの施設をオープンしました。
当時は、新しい観光施設として県外からも客が訪れるなど、賑わいを見せました。
しかし、その後、各地に同じような施設ができた影響もあり、入場者数は年々減少傾向が続いています。去年度、入場料を半額にする措置をとり、回復の兆しを見せましたが、オープン時に比べ、入場者数は半減しました。
また、ユー・トリオにつながる国道469号線は、大型ダンプがひっきりなしに通るため、交通アクセスも懸念材料の一つのようです。
町民のおよそ3割が60歳以上と、過疎化が進む芝川町。去年2月、富士宮市との合併を申し入れましたが、議会で否決され、当面は単独の道を進むことになりました。
財政的にも厳しい状況の中、観光の核でもあるこの温泉施設をどうするのかは町の最重要課題となっています。
このように、施設建設などハード事業に1億円、または一部を遣った市町村は、およそ30市町村。そもそも、この「ふるさと創生基金」には、ハード事業よりも、その地域の歴史や伝統などを生かした個性豊かなソフト事業に使ってほしいとの願いが込められていました。
といっても、いきなり決まった国のこの事業。当時、県内の各市町村も使い道に困った挙句…その果てに思いついたのが「貯金」!
当時、21の市町村が正式な使い道が見つかるまで、とりあえず基金として蓄えておこうと決めたのでした。そうすれば1億円の目減りは防げるし、利子も期待されるというわけです。
富士宮市では、「富士山とともの歩む水と緑の国際文化都市」を目指し、基金として蓄える道を選びました。その後、市が5600万円を積み立て、基金は1億5600万円に膨らみました。
しかし…
使わなくていいところに使ったという意味では無駄遣い。
と、富士宮市議会の佐野議員が指摘するのは、市内に2年前にオープンした「富士山さくらの園」。市では、基金の一部を取り崩し、およそ8500万円をかけて、この施設をつくりました。
元々、この土地を含めた一帯に、市は県の事業を誘致するために計画した観光施設「富士山カルチャーパーク」をつくる予定でしたが、この計画は停滞。しかし活用しなければ、国に土地を返さなければいけない取り決めがありました。そこで、市が考えついたのがさくらの園でした。
小室市長は、国の行財政改革の中で、特に林野庁の国有林に対する赤字問題が大きな背景にあり、この土地を返さなければならないのなら、さくらの園を買い取って頂くのも一つの手だが、現実的にはあり得ないと言います。
佐野議員は、さくらの園建設は、苦肉の策という感じが否めなく、お金がないからということで「水と緑の創生基金」に目をつけただけの話で、まさにそういう意味では無駄遣いであると言います。
富士山の世界遺産登録を地元として願っている市としては、カルチャーパークはアピールをするのに必要な施設。しかし、果たしてさくらの園は…
小室富士宮市長は、富士山の世界遺産の話は顕在化していなかったため、さくらの園をつくる時点での判断は、それはそれでベターだったのではと言います。
行財政改革が地方自治体にも求められている今では、夢のような1億円。各市町村は本来の目的・誇りあるふるさとの創生のために、果たして有効に運用できたのでしょうか。