夏本番が近づき、海水浴シーズンの到来です。しかし気になるのは海の事故。受け入れ側の安全対策はどうなっているのでしょうか。伊豆の代表的な観光地の熱海市と伊東市。その対応は随分違うようです。
県内のトップを切って、6月4日に伊東市のオレンジビーチで海開きが行われました。海の家が次々と造られ、客を呼び込む準備が進む一方、事故防止の拠点となる監視所の設置はまだ先で、夏休みに入る7月22日からです。
監視所は、水難事故への目配りをはじめ、天候に応じた遊泳指導、津波の警戒・避難誘導まで、幅広い仕事を担います。安全対策の空白がまだ3週間も続く形ですが、伊東市はそのようには考えていないようです。
伊東市の青木昇助役は、自然界で楽しむものについては、自分の身は自分で守るもののため、市が監視所を設置する義務はなく、行政サービスであると主張しています。
伊東市の監視業務は、市や海の家業者などがお金を出し合い、専門業者に委託します。予算は、市の補助金90万円と、海の家業者の負担金を合わせて140万円で、8月27日まで海岸3カ所に監視員を配置する計画です。
しかし、その内容には疑問が残ります。市内には他にも海水浴客が訪れる海岸がいくつもありますが、市が監視所の設置の目安を、海の家が建つ海岸としているため、計画の対象にならないのです。
海の家が建ち並ぶ、宇佐美海岸には監視所が設置される予定ですが、その隣の留田海岸には海の家ができないため、監視所は設置されません。
しかしこの海岸の近くに、関東大震災の時に、多くの犠牲者を出した津波の到達碑があり、神奈川県西部地震の発生に備え、警戒が必要とされています。
監視員は最低2人必要とされていますが、川奈海岸に配置されるのは、わずか1人。隣のいるか浜は、公園扱いということで、地元の町内会に管理させています。
さらに夏の初めは客が少ないとして、今年は監視業務の開始を去年よりおよそ1週間遅らせていますが、去年の実績を見ると、最大1500人いたお客を切り捨てる結果になっています。
伊東市観光課の肥田義則課長は、1500人は確かに多いが、監視期間を長くするために、海の家業者にこれ以上の負担金を求めるのは難しいと言います。
隣りの熱海市では、6月25日にサンビーチなど4カ所で海開きが行われましたが、伊東市とは異なり、監視所を同時にオープンさせました。
ここでは毎年、海開きに合わせて、津波避難訓練を実施し、安全への意識を高めています。
熱海・伊東地区での海水浴中の水死事故は県内では比較的少ない方です。ただこのうち、3年前に起きた1件の事故をきっかけに、熱海市は安全対策を強化しています。
当時2人いた監視役の住民が、用事や腹痛で同時に海を離れ、その間に小学生が溺れるという、想定外の出来事だったのです。
監視体制を今のように強化。安全対策は観光投資のコストとの考えを徹底しました。
熱海市の監視業務は、市が直接監視業務を委託。4カ所ある海水浴場ごとに、2人から7人の監視員を置き、8月末まで完全にカバーします。
熱海市観光商工課の植野勇課長は、海水浴客の数に関わらず、海水浴客の安全を守るのが責務であると言います。
熱海市の去年の海水浴客の数は、伊東市よりおよそ4万人下回っていました。しかし、この夏の監視業務では、期間・人数とも伊東市を大幅に上回り、事業費は7倍の1000万円となっています。
客を大切にするという観光地ですが、実は場所によって、安全にかける人やお金は随分と違います。自分の身を守るためには、行政の対応を含め、より安心して楽しめる海岸を選ぶ賢さが必要となってくるようです。