今回は、便利になるようにと、国を挙げて進めている事業なのに、利用者がほとんどいないというシステムを取り上げます。
これまで国はインターネットで行政と利用者をつなぎ、コストや時間の無駄を省く、電子化によるシステム作りを進めてきました。
その取り組みの一つに不動産登記法の改正があります。今まで司法書士などに頼んでいた不動産登記申請などを、自宅でできるようになりました。
不動産登記とは、財産である土地や建物の場所、面積、所有者の住所などを、公の帳簿に記載して、所有する権利があることを示すものです。
この法律の改正で一番変わったことは、発行されるものが権利証からパスワードになったことです。
専門用語では「登記識別情報」といいます。この緑色のシールの下に、英数字の12桁のパスワードが書かれています。このパスワードが、登記情報の入っている箱を開ける鍵の役割をします。
静岡地方法務局不動産登記部門の高橋熊樹登記官は、自宅のパソコンから登記申請ができるのがメリットだと言います。
県内では去年8月から熱海で、そして今年2月に静岡と沼津でこの制度が導入されました。県内ではどの位、利用されているのでしょう。
高橋登記官によりますと、現時点では、利用は数十件しかないそうです。
便利になるはずの制度がなぜ広まっていないのでしょうか。
普及しない理由として、片山明彦司法書士は、インターネットで申請するには「住民基本台帳カード」という身分を証明する情報を電子化したカードを、役所に行き1000円で作らなければならないことが面倒だからだと言います。
また、これを読み取る機械も必要です。一台4000円ほどかかります。
ところが、不動産登記のオンライン申請を実際にやってみると、難しい専門用語が数多く出てきます。
相談できる専門家がいない一般の方には利用しづらいのは無理もありません。
また、片山司法書士は、パスワード方式では、パスワードが流出しても、申請者がそれに気付かないのと、パスワードが登記申請者のものであるかどうかわからない、という二点の問題点を指摘します。
さらにこんな問題もありました。住所変更などをした時に、出さなければいけない住民票が、まだ電子文書化していないため、インターネット上で申請することができないという根本的なシステムの遅れもあったのです。
高橋登記官は、いろんな人から意見をもらって検討して改良していきたいと言います。
片山司法書士は、司法書士がほとんど登記申請をしていることから、司法書士に使いやすいシステム作りと、一般の方にも利用しやすいシステム作りの両方をして欲しいと言います。
オンライン化という方向性は確かに便利なものです。しかし、複雑な不動産登記に関しては各省庁の連携とセキュリティの問題を克服しなければならず、現段階では、まだまだ課題がありそうです。