今回は、県が三つの県立病院を2008年をめどに独立行政法人化する方針についてです。県直営から法人による運営に変わることで何が変わり、どんな問題が起きているのか、全国に先駆けて法人化した大阪府の例を交えながら考えます。
地方独立行政法人とは、自治体が作る法人のことで、県とは別の組織です。
県の計画では、県立総合病院、こども病院、こころの医療センターの3つの病院を一つの法人が運営します。質の高い医療と効率のよい病院経営を両立させるのが狙いです。
これまでは、患者を増やしたり、コスト削減を図って収益を上げても、全てが「県費」として吸い上げられるシステムでした。今後は、直接病院の収入となり、採算の独立性が高まります。
県立総合病院の神原啓文院長は、独立行政法人化によるメリットは大きいと言います。
県立の3つの病院には、医師や看護士、技師など、およそ1800人の職員が勤務しています。県職員組合は法人化によって、職員が公務員ではなくなるため、職員の意識が下がり、医療の質の低下につながると反発しています。
県職員組合の鈴木博執行委員長は、法人化を強く懸念しています。
病院の独立行政法人化は国立大学病院では進んでいるものの、都道府県レベルで踏み切ったのは大阪と宮城の2つの自治体にとどまっています。
大阪府は、今年4月に5つの府立病院を一つの法人へと運営を変更しました。理由は65億円という巨額債務です。法人化によって、これまでの経営にメスを入れ、一年に15億円ずつ、借金を一気に返そうという計画です。
大阪府立病院機構の徳永幸彦副理事長は、赤字経営からの脱却するための経営改革であると言います。
具体的には5つの病院でバラバラだった財務会計システムを統一するなど、事務部門の見直しを図りました。
また5年間で、130人の職員を削減する計画をたて、1年目の今年は、50人の職員を別の職場への配置転換するなど、組織のスリム化を進めています。
しかし法人化は、折からの看護士不足と重なって、新たな歪みを生み出しています。
大阪府立病院の職員組合が実施したアンケートでは、「以前よりも忙しくなった。欠員が増えた。」と感じる看護士が全体の65%を占めています。
労働環境の悪化が進み、業務への支障が出ていると現役の看護士は言います。
巨額債務なため、独立行政法人による改革を選んだ大阪府ですが、静岡の県立3病院、中でも総合病院は、7年連続の黒字です。なぜ今、法人化に踏み切るのか、県職員組合は県に納得のいく説明を求めています。
県病院管理室の松浦康夫参事は、現時点で経営は順調だが、今後を見据え、経営が健全なうちに早く手立てを取っていく必要があると言います。
県から切り離され、柔軟な経営ができると期待が高まる一方で、経営が悪化すれば責任を負うのは病院です。
県が目指す目標の前に、収益を改善しながら県立病院としての公平性や医療の質を保てるのかといった課題が、突きつけられています。