今年8月、奈良市の救急で運ばれた38歳の妊婦が11箇所の病院に受診を拒否され、受け入れ先が見つからず、死産となる悲劇が起こりました。
去年8月には、同じ奈良県で妊婦が19箇所の病院から断わられ、死亡したばかり。悲劇は繰り返されてしまいしました。この問題を受け、消防庁が全国調査した結果、同じケースがいかに多いかがわかりました。
県内でも、119番で搬送された妊婦が受診を拒否されていたケースがあります。その数、ここ3年間で62件にのぼります。このうち3回以上断られたのは9件、中には7回断られたケースもありました。
119番通報を受けると消防はどんな体制を取るのでしょうか。
静岡市消防防災局に聞いてみたところ、「救急隊長が病院と電話で連絡を取り、病院を選定する」と話します。
静岡市内で救急を受け入れている総合病院ではどうでしょうか。
静岡済生会総合病院 石塚先生に伺ったところ「断らざるをえないこともあった。」と話し、理由も述べました。
この病院では今年4月までは産婦人科医が3人しかおらず、救急患者を受け入れるのは難しい現状がありました。
24時間体制の激務で、訴訟も一番多いとされる産婦人科希望者が年々減ってきていて、休診する産婦人科医院も出てきています。
日本産婦人科医会の方にお話を聞くと「産科医が足りているところは一つもない。」と現状の厳しさを語りました。
県内の産科医は年々減っていて、この20年間で50人ほど減りました。分娩を扱える産科医の数はもっと少なくなります。
静岡済生会総合病院では、今年4月から、産婦人科医を3人から5人に増やし、救急事態に対応する医師がいないということはなくなったということですが、まだまだ安心は出来ません。
静岡済生会総合病院 石塚先生は「病院がいっぱいだった時の連携システムを考えなければならないとは思っている」と話します。
産科医不足は深刻ですが、妊婦の受診拒否には他にも背景があります。
県内で、去年救急で運ばれたおよそ430人妊婦のうち、70人は妊娠してから1度も病院にかかっていませんでした。
県のこども家庭室に聞いてみたところ「かかりつけ医がいない今の出産のシステムは119番を想定していない。こんなにも未受診が多いとは思わなかった。想定外でした。」と話します。
かかりつけ医がいない妊婦には、どんな問題があるのでしょうか。
静岡済生会総合病院 石塚先生は「かかりつけ医で診察をしていないと母親、赤ん坊共に異常があるのか、感染症があるのか、などを一度に調べなければならず、リスクがとても大きくなる。」と話します。
東京や名古屋、福岡など大都市でのたらい回しの理由として挙げられるのが、かかりつけ医を持っていないことです。なぜ受診をしないのでしょうか。
妊婦の方に聞いてみたところ、「検診費が高いのが問題ではないか?」と話します。
妊娠がわかってから出産するまでには通常11回ほどの定期健診があります。保険が適応されないため、1回につき5000円から1万円かかり、10万円ほどの検診料がかかることになります。
しかし、多くの妊婦の方たちは「高いけど受診は母親としての義務。かかる費用も見越して出産に挑むべき。」と話します。
また、母子手帳には2回の無料券がついていますが、これすら知らない妊婦がいると見られます。
県のこども家庭室に聞いてみたところ「とにかく妊娠したら一人で抱え込まずに相談にきてほしい」と語ります。
かけがえのない命を失わないためには、産婦人科医の待遇改善など医療体制を整えることと妊婦の意識を高めることこの両方が必要です。