住宅やビルなどを建てる際、建築基準法に適合しているかどうかの確認が必要で、その申請を「建築確認申請」といいます。
姉歯元建築士に端を発した耐震偽装事件を受け、今年6月に国は建築基準法を改正しました。しかし、この改正で、建築確認がなかなか下りず、建築業界は今、ピンチに立たされています。国民の安全を守るための法改正で、いったい何が起こっているのでしょうか?
今年9月に着工予定の建築現場です。しかし、ご覧のように工事はまだ何も始まっていません。
「建築確認が遅れているのが一番の原因。工期を取り戻せるか対応に苦慮している。」こう話すのは、沼津市に本社がある建築会社の代表、高田誠さんです。
建築確認が下りないと工事に取り掛かることは出来ません。高田さんの会社は、7月に建築確認申請をしましたが、取材した今月はじめには建築確認が下りていませんでした。その後、やっと着工しましたが、当初予定した3月中の完成は厳しい状況です。
建築確認が下りないのは、姉歯事件で建築基準法が改正されたからです。審査する民間の確認審査機関に聞いてみました。
なぜ審査が伸びているのか?という質問に「今までの審査基準より相当多岐多面にわたり、審査項目・内容が規定されている。」と答えました。
高さや構造によって違うので一概には言えませんが、使用する建築資材についての品質認定証の添付も義務付けられるなど、これまでより申請書類が大きく増えました。このことも審査に時間がかかるおおきな要因で、これまで3週間で確認が出来た建物が、改正後は2,3か月かかっているのが現状です。さらに、建物によっては第三者機関によるWチェックも必要になり、加えて1ヶ月ほど時間がかかっています。
実際に混乱は数字にも現れていて、9月末までの住宅着工件数を見てみると、去年の同じ時期に比べ、4割も減少しています。
問題は、現場ではより深刻です。加藤工務店の高田会長は「仕事がなくなって経営が悪化するのが一番の心配ですね。それに技能者も他の産業に移ってしまうのではないか?」と話します。
そのほか、着工までにガソリンや資材の値上がりでコストが膨らんでいますが、契約を結んだあとから値上げを要求するわけには行きません。
「うちとしては2、3件ですのでその分だけ減っているということはありますが、来年を迎えてどう影響してくるか、いい方向ではないかな。」こう話すのは、ガラス店の岡田剛さん。影響は建設業にとどまらず資材を納入する業者にまで及んでいるのです。
一方、こうした状況について建築士はこう指摘します。「たとえば(審査)項目が2倍になるのなら、(審査する人も)2倍にしないと、当然今までと同じ期間では(審査は)下りてこない。一言で言うと審査する人の数が足りない。」細澤1級建築士は、国の準備不足を指摘した上で、新たな構造計算ソフトがまだ完成していないことも混乱に拍車を掛けているとしました。
こうした一連の事態について、国はこう話します。「そもそも審査を厳格にやることで時間がかかることは当然のことなので、そこはある程度、安全にかかるコストとしてご理解いただきたい。」
建物の安全を守ることは第1ですが、審査の遅れによる不利益も多くあり、このままでは経済の停滞にも繋がりかねません。国は、少なくとも今の混乱を収めるための環境づくりを早急に進める必要があります。