病院の不正請求問題が相次いでいます。どうして不正請求はなくならないのか。また、見抜くことができないのか、診療報酬制度の仕組みとそのチェック機能を検証します。
今年8月、人工の歯の埋め込み治療に絡んで、診療報酬を不正請求したとして、藤枝市立総合病院が1ヶ月間の保健医療機関の取り消し処分を受けました。病院は、保険診療が認められない混合診療を保険請求していました。
さらに、県立総合病院でも、診療報酬およそ20億円の不適切な請求が見つかり、厚生労働省が調査を続けています。施設基準によって変わった入院基本料の改定を知らなかった単純ミスとみられています。
病院内と外部で複数のチェックを受けるのにどうして不正は見逃されてきたのでしょうか?
診療報酬請求は、患者ごとの診療内容を病院が1ヶ月ごとにまとめたものです。これがレセプト=診療報酬明細書と呼ばれています。
レセプトは、国民健康保険と社会保険の2つの審査機関に提出されます。これらの審査機関で適正と認められれば、各保険者にレセプトが回され、診療報酬が支払われる仕組みです。
浜松市の聖隷浜松病院です。ベッド数が740床と県内最大規模の病院です。外来と入院患者合わせて毎月3万件のレセプト=診療報酬明細書を作ります。
医師は診察内容をまず、紙のカルテに書いていきます。
そのあと、パソコンで電子カルテを作ります。検査した項目を選ぶと黄色に変わりました。
さらに、紙に印刷して、医療秘書ともう一度、確認です。
言いながら入力するので、どうしても入れ間違いだとか、日にちの間違いだとかミスが出ますので、二重のチェックをするようにしています。
そして、患者の会計用と、レセプト用に検査内容が打ち込まれていきます。こうしてまとめた毎月およそ3万件ものレセプトを、1ヶ月ごとに再点検し、審査機関へと提出します。
聖隷浜松病院は、(電子)システムでもらう内容は、ある程度、整合性、正しい内容が来るが、それを信じてしまうのではなくて、必ず人の目、医事課員の目でしっかりチェックをして、本当に正しくシステムができているかどうかを何重にもチェックをするということが大事と言います。
こうして審査機関に県内各地の総合病院や個人病院から送られてくるレセプトは膨大です。紙と電子データの形で、国民健康保険は毎月200万件、社会保険は毎月150万件のレセプトをチェックするのです。
件数の多さもさることながら、問題は審査機関でのチェックは、あくまでも診療内容に対して、請求金額が合っているかどうかが目的です。診療内容をごまかして請求された場合は、よほどの過大請求でない限り審査機関もお手上げです。
県国保団体連合会では、「病名がついていたら、それに対する手術なり、処置なりがあれば、正しい明細書として通ります。ただその病名がそのカルテに書いてある病名が、そのカルテの内容と合っているかどうかという点検は、実際にカルテを見ていないので、こちらでは分からない。」と話します。
また、県立総合病院のように、入院基本料算定の基になる施設の基準が請求どおり合っているかどうかも、審査機関には立ち入り調査などの権限が与えられていないため、チェックには限界が生まれます。
審査機関のチェック機能に限界がある以上、医療機関の自主確認とモラルに頼るしかないという現実が、不正の温床を生み出しているといわざるを得ません。